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活躍する消費生活アドバイザー

ご多忙のところ、資格取得の勉強時間はどのようにして作られたのでしょうか。

井上 よく聞かれる質問です。時間の使い方についての優先順位の問題だと思います。
 私たちは、相手の時間を大切にすることや、ひいては自分の貴重な人生の時間を大切にすることについて、あまり考えないんですね。ムダな会議を延々としたりして、湯水のように時間を使ってしまうことがあります。そう言う私も、「時間の使い方が大切だ」と気づいたのは、自分で事務所を経営するようになってからなのですが。
 時間を効率的に使えないと、事務所はすぐ潰れてしまいますので、徹底的に効率化していく。作業を効率化して、隙間時間を活用していく。一番大事なことは、それを日々継続していくことです。そうすれば、1日30分とか、1時間程度は捻出できると思います。

 それでも時間がないという方は、「どうして時間がないのか」「どうすれば、時間が捻出できるのか」を、人に聞くのではなく、自分に問いかけてみるといいと思います。24時間を振り返って、何をしていたかを紙に書きだしてみる。そして、「どうして…」と、何度か自分に問いかけてみれば、おのずと答えが出るのではないでしょうか。

消費生活アドバイザー資格取得のきっかけは?

井上 司法試験の試験科目には消費者法は入っていなかったんです。そこで、資格の勉強によって消費者法の知識を補おうと考えて、消費生活アドバイザーと消費生活相談員の試験を同時に受験しました。

 当時、出会い系サイト被害、サラ金・ヤミ金被害で、多重債務に陥ったり、生活が破綻して相談に見える方が多かったので、消費者法の勉強の必要性を感じていました。なかには、せっかく悪徳業者と戦って被害金を取り戻しても、また同じ被害を受ける方や、過払い金を取り戻したり自己破産したりして債務整理しても、また借金を作ってしまう方も、少なからずいました。
 それで、「法的な救済だけで十分なのだろうか」と、私自身の弁護士としてのあり方に疑問が生じました。そうしたなかで、「消費者ってなんだろう」「消費社会の仕組みは、どうなっているのだろう」と調べて、消費生活アドバイザー資格に興味をもちました。

勉強をされて、他資格と異なっていると思われたところは?

井上 消費者法の勉強だけですむと思っていたら、試験範囲には消費者行政や経済、環境問題、衣食住も入っている。洗濯記号の問題もありましたね。ほかに類を見ないほど学習分野が広い。その広さには圧倒されました。しかも、択一に論文、面接がある本格的な試験です。
 ただ、広い試験範囲のおかげで、そういった諸分野を横断して分析していくことの重要性に気づきました。企業経営や消費者心理などにふれたことが、後の中小企業診断士や産業カウンセラーの資格取得につながったと思います。
 職業法律家の陥りやすい、視野が狭くなってしまうことを意識して、物事を多角的な視点で検討するように習慣づけることはできたように思います。

 消費生活アドバイザーという資格は、消費という切り口から、縦割りになってしまった現代社会に対して横串を通すものだと思います。専門家や職業人はタコツボ化してしまっているとよくいわれているのですけれど、そういうところで、この資格の存在意義は大きいのではないでしょうか。

消費生活アドバイザーの活動分野について、知見をうかがえましたら。

井上 大人になって、「なんとなく最近、視野が狭くなってきているな」と感じるすべての人にお勧めできる資格だと思います。

 とりわけ福祉分野の人に取得してほしいですね。私は最近、成年後見の仕事が増えてきまして、福祉分野の方とお会いすることが多くなったのですが、「弁護士とは対極的な職業だなぁ」と感じることが多いです。
 最初にお話しましたように、私たち法律家というのは父性的な原理で、問題を断ち切ることが得意なんですけれども、福祉分野の方はその逆で、問題を切り分けることが苦手なように見えます。福祉の特質からなのかもしれませんが、すべて自分で抱え込んでしまって、そのせいで苦しんでいる方がひじょうに多いように感じます。私たちが父性に囚われるとしたら、母性に囚われると言っていいかもしれません。

 福祉制度は、「措置から契約へ」と変わってずいぶん経ち、契約社会の考え方や消費者へのサービス提供といった視点も重要になっているんですけれど、それゆえに余計混乱してしまうというか。福祉関係者の悩みが深まっているように見受けられます。

 そういったところに、まさに分野を横断して、消費者という切り口から見ていく消費生活アドバイザー資格者の出番があるように思います。
 広い範囲を勉強して試験突破した資格者であることをもっとアピールしていっていただけると、助かる人が多くなるかもしれません。

(取材:2019年4月26日)
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