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活躍する消費生活アドバイザー

1992年時点で、すでに「持続可能な開発」という言葉が使われていたのですね。

村上 そうですね。国際社会では1987年のブルントラント委員会の報告書で共有され、地球サミットで広く使われるようになりました。
 日本では1992年当時、環境省が守備範囲を考慮してか「循環型社会」という言葉に置き換えたことで、持続可能な開発のイメージがせばめられてしまったような気がします。2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグ・サミット)以降ようやく日本政府も使いはじめたように思います。外務省・環境省は「持続可能な開発」、文部科学省は「持続可能な発展」と訳語も統一できていませんでしたね。

現在、(一社)環境政策対話研究所で「次世代エネルギーワークショップ」の開発と普及に取り組まれているとのことですが。

村上 ESD-Jを辞め、もう少しESDを実践する現場の仕事をしたいと考えていた時に、かつて仕事でお世話になった方から声をかけていただきまして。大学生や若手社会人を対象とした「次世代エネルギーワークショップ」の開発と普及に携わっています。2050年に向けた脱炭素社会とエネルギーのあり方を議論する場づくりですね。

 ワークショップは多様なバックグラウンドの参加者(電力会社から環境NGOまで)が2〜3日の時間をかけ、@テキストと専門家による講義や質疑応答で基礎的な知識を共有し、A5〜6人の小グループでしっかり議論を行い、Bエネルギー・シミュレーションを使って定量的な側面からも検討を重ねながら議論を深め、Cそれぞれの脱炭素社会とエネルギーのあり方(2050年のビジョン)を描く、というものです。電気やガスなどのエネルギーは私たちの生活や産業の基盤を支えている血液のようなものなので、大幅に減らすことは簡単でなく、化石燃料からの脱却もまだまだ課題がいっぱい。需要と供給の双方の視点からどのようなビジョンを描くのか、検討すべきことが満載のテーマなのです。
 今年はこのワークショップを高校生向けに再構成し、モデルプログラムを実施していますが、加えてコロナ禍によりオンライン化にも取り組まなくてはならなくなりました。参加型のプロセスは大切にしつつ、学習内容が詰まっているワークショップをオンライン化するという難しい課題に四苦八苦しています。

革新的なプログラムになりますね。

村上 ぜひそうしたいです。今年から学習指導要領が順次新しくなりますが、高校では「総合的な学習の時間」から「総合的な探求の時間」と名称が変わって、課題解決型で生徒主体の学びがますます重視されるようになります。そのコンテンツの一つとしても活用してもらおうと、今頑張って取り組んでいるところです。
 気候変動の被害は今の若者たちを直撃します。そのことを知り、どうすべきかを自ら考え、大人に任せておいてはいけない現実を知り、行動につなげていってほしいと思っています。

気候変動への関心も、日本ではあまり高くないかと……。

村上 背景には、これまで産業界や政府が積極的でなかったことがあるのではないかと思います。ヨーロッパでは重要な課題として取り組まれているのですが。でも、ようやく菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しましたね(※)。
 かたや、グレタ・トゥーンベリさんが国会前に座り込みをしたことをきっかけに始まった'Fridays For Future'の運動が日本の若者たちの間にも広がってきています。若者は怒って当然でしょう。彼らは今政府に対して、本気の気候変動対策を取ること、政策決定プロセスの公正性と透明性を確保すること、そして若者の意見の反映を求めてウェブ上で署名活動を展開しています。いよいよ誰もが消極的ではいられなくなります。

※10月26日、菅首相は所信表明演説で「2050年カーボンニュートラルを目指す」と宣言しました。日本もようやく国際社会と同じ土俵に立ち、脱炭素に向けた取組みを進めることになります。

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