TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > WEBマガジン「あどばいざあ」 > 特集記事 > パネルディスカッション抄録 消費者志向経営実現に向けた消費生活アドバイザー資格者の役割4

特集記事

消費生活アドバイザー資格者の現状と評価

今井 ありがとうございました。
 次に、それぞれの企業の中で、消費生活アドバイザー資格者が現状としてどういう状況にあるのか、どう評価されているのか、うかがいたいと思います。

長谷川 ACAPは事業者団体ですので、個々の企業における詳細な情報は持ち得ていないのですが、活動を通して入ってくる情報によりますと、消費生活アドバイザー資格者が企業活動のいろいろな分野で活躍しています。

ある企業では、消費生活アドバイザー資格者が一つのチームを形成しまして、品質や表示、広告内容の作成に参加して、アドバイスやチェックを行っています。これは、社内の各部門から、そうした機能を期待され、要請を受けて行っているものです。
 またある企業では、社員に消費者と企業の在り方や考え方、コミュニケーションの仕方などを消費生活アドバイザーが中心になってお話やディスカッションをし、認識の輪を広めています。
 そのほかの企業、また自治体の消費生活相談センターや消費者団体でも、消費生活アドバイザーによるさまざまな活動が行われていると思います。

ただ残念なことは、企業が本当に消費生活アドバイザー資格者を活用しきれているかと言いますと、まだまだ取組みの余地は大きいと言わざるを得ません。消費者をより深く理解した消費生活アドバイザーが、戦略的に配置されるようになりますと、消費者志向経営も一段と進むのではないかと思っています。

釘宮 消費生活アドバイザー資格は、以前は専業主婦の再就職のための資格といった意味合いが強かったかと思います。実際、私も、資格取得は約25年も前になりますけれども、専業主婦でした。
 現在は、昨年度の合格者で言いますと、女性が約100名に対して男性が約200名、男性がほぼ倍です。これを見ますと、職場で資格を活かしていらっしゃる方が多くなっている、ということになるかと思います。

2014年度男女別合格者数

NACSでは、職場で資格を活かすのとは違った形で、会員自身の啓発のための講座や自主研究会を提供させていただいています。
 たとえば、通信関係や金融関係の会社に勤務している会員が、子ども服のJIS化に取り組み、2015年12月に規格が制定公示されました。こうした社会貢献活動も行っています。

また私どもの団体には、相談員として消費生活センターに勤務している方が数多く所属しています。そういった会員が省庁や自治体の検討会などで、消費者の代表として意見を述べることもあります。また、企業を定年退職をされた後、行政の相談員として活動する会員もいます。

このように、消費生活アドバイザー資格をもつことにより、それまでとは違った能力が開発され、活躍の場が広がっていくのは大変素晴らしいことだと思います。

消費生活アドバイザー資格者へのアンケート調査結果を見ると、残念ながら、資格が「どちらかといえば役立っていない」また「役立っていない」とお答えになった方が、全体の24%ほどを占めています。
 約4分の1の方は資格が活かされていないと思っていらっしゃるわけで、これは大変残念なことです。資格を職場で仕事に活かすということも大切なことですが、職場とは違った形の活かし方もあります。NACSではそのような活動の場を提供していきたいと思っています。

アンケート調査結果

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木村 私からは、一企業としての事例をお伝えしたいと思います。
 富士フイルムグループには消費生活アドバイザー資格者が49名います。現在、どういった部門に消費生活アドバイザー資格者がいるか調べたところ、研究開発・製造部門で14名、企画やマーケティング事業部門に14名、それから販売やアフターサービスを行っている部門(関係会社含む)に12名、そして私たちのようなスタッフ部門が9名ということで、かなりバランスよく配置されています。
 当社では、お客様に直接接する顧客応対者だけではなく、開発・製造・マーケティング・スタッフ部門等で、各担当者が「次工程はお客様」という意識をもって、常にお客様を向いて考え、行動していくことを目指しており、そのことを私たちが行う社内研修でも各メンバーに伝えています。
 その推進役であり、キーマンとしての役割を果たすのが、それぞれの部門に在籍している消費生活アドバイザー資格者と考えています。

1980年代から90年代は写真フィルム全盛時代でありまして、当時は当社製品は寡占状態にあり、シェアも高く、良いものをつくっていれば自然と売れた状況でした。しかし、写真のデジタル化にともない、現状では写真フィルムの需要は大きく落ち込みました。直近の十数年で、事業構造も大きく変わり、B to B事業もかなり伸びています。
 現在、富士フイルムグループでは11事業を展開しておりますが、競合も多く競争も激化しています。これは、ある意味では当たり前のことなのですが、当社は過去にそういう経験がなかったので非常に大変な面もあります。こういう環境下で生き残るためには、B to C事業だけでなくB to B事業でも、やはり顧客視点、すなわち消費者志向の考え方は非常に重要であると考えています。

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