TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > WEBマガジン「あどばいざあ」 > 特集記事 > パネルディスカッション抄録 消費者志向経営実現に向けた消費生活アドバイザー資格者の役割5

特集記事

川口 日本ヒーブ協議会の会員の多くは消費生活アドバイザー資格者で、お客様対応や商品開発、調査やマーケティング、品質保証、消費者啓発、CSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)など、さまざまな業務に携わっています。
 富士フイルムさんでは、多様な部門で消費生活アドバイザーが活躍されているというお話でしたが、まだ一般的にはお客様サービス室が取得する資格というイメージが強いのではないでしょうか。
 しかしお客様対応窓口だけではなく、商品開発や営業・製造など、商品やサービスに直接活かせる部門にも資格取得の推進が重要と感じています。アンケート調査結果でも、消費者志向経営に必要不可欠な資格にするために必要なことの上位に「消費者起点の商品開発とサービスの向上」が挙げられています。

アンケート調査結果

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日本ヒーブ協議会では、35周年事業として、「お客様の声を活かした取り組み55事例」を冊子としてまとめました。会員企業に寄せられたお客様の声で実際に改善・開発を行った事例を集め、横断的に掲載しています。あえて業種業界別にせず、商品品質や表示、使い勝手などの6つのカテゴリー別に36社55事例を紹介しています。消費者・企業・行政のコミュニケーションツールになってほしいと願って作成したものですが、企業内でも事業活動の参考として活用していただいています。
 また、一般消費者や大学生・小学生を対象とした講演会なども実施しています。お客様の声をもとに企業が変わり、商品サービスが変わること、消費者の行動によって世の中が変わって、それにより良い消費社会をつくりあげていけることなどをお話しています。こうした発信をすることも、消費生活アドバイザーの重要な役割だと感じています。

消費生活アドバイザーは、取得のために学んだ幅広い知識を、企業での業務に活かしている、とよく聞きます。
 私自身、お客様の声を改善や商品開発に活かすのはもちろんのこと、パッケージをチェックするマニュアルを作成し、共有化してお客様の声を従業員に聞いてもらう活動を推進しています。この取組みは、一事業部だけでなく全社に活動が広がり、全従業員がお客様の気持ちになって、ものづくりに取り組んでいこうという機運につながってきたようにも感じています。

伊藤 経済産業省にも、少ないながら、地域の経済産業局等で15名程度の消費生活アドバイザー資格者が活躍しています。

制度全体について、期待も込めて申し上げると、企業側、経営者側から見たときに必要なのは、ユーザーイノベーションのできる人材だと思います。消費者起点で商品開発できる専門的なアドバイザー的能力とコンピテンシーを持っている人です。「それは、すぐには無理ですよ」と言われるかもしれませんが、日本のGDPの6割を個人消費が支えています。そこを掘り起こしていくことが産業政策面からは、どうしても重要なのです。
 個々の消費者のWANTS(ウォンツ)に応えていくだけでなく、企業側から見たときの要請にこそ、個々の消費生活アドバイザーがどう応えていくか。その両方の役割を消費生活アドバイザーが果たせたときには、企業内でしっかりと評価する。社会としてそれを持ち上げ、資格者を増やしていく。そうした環境整備も必要だと思います。

一番望ましいのは、そこで生まれた商品が、日本発として国際的に広がっていく展開になることでしょう。
 たとえば、マウンテンバイクは消費者が発案したものと聞きます。山道も走れる自転車がほしいという愛好家たちに応え、開拓者精神のある企業が商品化していったのだと思います。
 そうした提案ができる、消費者の主観的な要素に一番近い現場にいらっしゃるのが消費生活アドバイザーです。そこが、類似の資格とは一線を画すものとして、この資格に今後さらに強く求められてエッセンスなのです。

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