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特集記事

グローバル・リスク(メガトレンド)

次に、グローバルなリスクについて説明します。
 「気候変動の緩和と適応の失敗」「水供給の危機」、そして「食糧不足の危機」が私たちの身近にあり、リスクが高いといわれています。

地球温暖化に伴う気候変動は、人為的に二酸化炭素の排出がなされたことが原因であるという共通認識はすでにあり、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が昨年(2015年)12月にパリで行われました。ここで、今後の二酸化炭素排出量削減に向けた取組みであるパリ協定が採択されました。

これに伴い、欧州ではビジネスでも、さまざまな動きが起きています。
 たとえば、機関投資家が石炭など化石燃料産業への投資から撤退する「ダイベストメント」が広がっています。この動きはCOP21の少し前からありましたが、さらに加速しています。

そして人口の増加です。日本では人口が減少し、労働力をどのように確保するかが問題になっていますが、世界を見ていくと人口爆発が問題だといわれています。
 国連環境計画(UNEP)が2002年に発表した推計では、2050年には少なく見積もって80億人、中間的には90億人、多い場合は100億人を超えています。

しかし2016現在、すでに73億人となっており、そうすると、2050年には100億人を超えることが予想されます。
 新興国の中流階級が増加し、より資源を使う生活を享受するようになっていくと、資源不足もいっそう深刻になります。

また、水不足のリスクもあります。
 日本には水は豊富にあるといわれていますが、本当にそうでしょうか。
 ウォーターフットプリントやバーチャル・ウォーター(仮想水)という指標で見ますと、そうともいえないようです。たとえば日本は、多くの農作物を海外から輸入していまして、その農作物は海外の水を使って育てられています。それらを日本国内で作物を育てた場合の使用水量で見る必要があります。
 下図の赤い部分は、世界における水ストレスが高い地域です。水不足がたいへん深刻な状況であることがわかります。

世界の水ストレス

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森林破壊も深刻です。
 違法な森林伐採や焼畑による原生林の消失、砂漠化による森林消失が世界で起こっています。
 ふだん、手にしている紙がFSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)認証と呼ばれるものが使われているか。そういったものの選択が、地球環境の保護や地球温暖化対策にかかわってきます。

下図は、企業における今後10年間の持続可能性のリスクをまとめたものです。
 気候変動、材料資源不足といった地球の持続可能性の大きな影響は、リスクを出現させる一方で新たな機会も生み出します。気候変動に対するダイベストメント(化石燃料の使用に依存する企業からの投資の引き上げ)が行われる一方、再生可能エネルギーを推進する企業への投資や、それら企業のイノベーションなどの活動などから機会が生まれると考えられます。

今後10年間の企業の将来的な持続可能性のリスク

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人間活動が生態系に与える負担も、リスクの一つです。
 私たちが今のままの生活を続けた場合の「アース・オーバーシュート・デー」、すなわち「人間による自然資源の消費量が、地球環境がもつ1年分の再生産量を超えた日」を国際環境NGOのWWFが発表しています。この日を境にして、将来の世代の地球の資源を現代の世代が既に使っている状況となっています。
 この「アース・オーバーシュート・デー」が、年々早まっていて、2011年には8月27日でしたが、2015年には8月13日に迎えています。人間による資源消費量が地球1個分を超えたのは、1970年代くらいからとされています。
 このまま使い続けていきますと、2030年には地球2個分を使うようになってしまい、これは持続可能な状況ではなく、破滅へ進む方向ですので、我々はエコロジカルフットプリントを地球1個分とする生活に戻さねばなりません。

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