TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > WEBマガジン「あどばいざあ」 > 特集記事 > 講演抄録 欧州先進企業事例から学ぶ持続可能な消費と生産5

特集記事

NGO、関連団体との協働

「ベター・コットン・イニシアティブ(BCI)」というNGOとアパレル・衣料業界との協働活動が、大きな関心を集めています。BCIは、農薬使用量を減らすことによってコットン栽培に携わる方の健康を改善し、コストも削減できるといったアプローチで「持続可能なコットンの生産」を目指しています。この活動には、アディダスやイケア、H & M、ナイキといったグローバル企業が参加し、コットン農家の生産を助けるイニシアティブの主流となりつつあります。

チョコレートのカカオの生産でも、インターナショナル・ココア・イニシアティブ(ICI)というNGOが活動しています。
 ネスレは2012年、コートジボワールで児童労働があったことを認め、児童労働を撲滅することを自社の取組みに入れ、このICIと協働しています。ICIは児童労働を発見し、そうした児童を学校へ通わせるといったサポートプログラムを実施しています。これは児童労働が行われているかどうかを確認するイニシアティブです。
 残念ながら、このイニシアティブには日本の企業が入っていません。ぜひ参加いただきたいと思い、私もICIの代表の方といっしょに日本の企業に活動を促そうとしています。

また児童労働を削減する取組みも行われています。
 コミュニティにフォーカスし、児童労働をモニタリングする地域を増やしています。2014年は、561のコミュニティをモニタリングし、約3,000人の児童労働を発見しました。児童労働を悪いと糾弾するのではなく、発見して子どもたちが学校に通う正常な状態にします。児童労働が行われている場所では、大人から職場が奪われている場合もあるので、そのコミュニティの状況を改善していくためのモニタリングなのです。

NGOが中心となり、企業を巻き込んでいく活動は、1企業だけではできません。下図のようなイニシアティブによって、企業が連携して全体的な取組みをしていこうとしています。

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特に、食品・飲料の業界では、サプライチェーン上の問題解決のための協働が広がっています。仕組みや輸送手段などのイノベーションによって改善していくというものです。

共通の課題がどこにあるかを企業同士で見つけ、それに対してイノベーターや社会起業家が事業のアイディアを寄せ、そこから企業がピックアップして(スカウト&スクリーニング)、プロジェクト体制を構築し資金調達する。
 社会課題を解決するような投資でうまくいった場合には、世界の他の地域で活用できるように広げ、大きな投資を呼び込み、事業を広げていく。そうした活動も始まっています。

欧州CSR/サステナビリティの動向

「サーキュラー・エコノミー」(循環経済)をEUが中心となって進めています。
 私はロンドンに住んでいますが、一般市民のリサイクル意識がそれほど高くはなく、ゴミの分別も日本ほど進んでいないように思います。しかし今後、欧州で資源の枯渇が見込まれることから、リースやシェアといった製品・サービスにイノベーションを起こす新たなビジネスモデルが模索されています。
 これには持続可能な生産と消費も含まれています。企業が持続可能な生産を行わなければ、持続可能な消費もありません。たとえばスーパーマーケットなど消費者に近い企業は、持続可能な消費とは何なのかを消費者に伝えていくことが求められています。

英国で昨年3月、「現代奴隷法2015」(Modern Slavery Act)が成立しました。ショッキングな名称ですが、奴隷制がいまもあるのです。東欧などから、だまされて連れてこられ、借金を背負わされ監禁されるような形で働かされる方たちがいらっしゃいます。
 「人権問題は日本にはない」と言う方もいらっしゃいますが、実際には、日本においてもいろいろな人権問題が起きているようです。海外からは特に外国人技能実習制度が、現代の奴隷制を助長する仕組みとして見られており、日本国内におけるサプライチェーンの管理もしっかり実施していくことが求められています。

盛りだくさんの内容を駆け足で説明させていただきました。ご清聴、ありがとうございました。

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