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特集記事

3 消費者市民社会における消費者の役割

(1)消費者市民の3つの役割

消費者市民の役割を整理したのが、次の図です。

消費者市民の役割

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「商品が持つ影響力の理解」は、経済的な行動ができるようになることにつながるので、経済的市民という言葉が使われています。
 つまり、市場の中で自分が買い物をすることは経済的投票、円投票(アメリカではドル投票)としてとらえられ、消費者が買った(投票した)ものが市場に残り、投票しなかった物は市場からなくなるので、経済に大きな影響力をもっています。経済的市民として、自分の影響力を行使して消費者市民社会をつくるということです。

中央は、倫理的市民といわれている役割です。
 「持続可能な社会をつくるためには環境や社会に優しい生き方をしましょう」という部分で、消費者市民社会のコアになる部分だと思います。
 倫理観は消費者だけでなく、企業にも求められています。企業でいえば、企業にとっても、消費者にとっても、社会にとってもよいものが求められるという「三方よし」の考え方です。

最後が政治的市民。これは「消費者が地域の街づくりやコミュニティづくりに参画しましょう」ということです。
 参画する方法は2つあります。
 一つは「助け合いましょう」「見守りましょう」「隣のおばあさんに声をかけましょう」ということ。もう一つは「意見や要望を伝えましょう」ということ。自分たちが生活をしていくなかで、たとえば商品について問題を感じたら地域の消費生活センターや企業に伝え声を上げる、あるいはパブリックコメントなどで自分が住んでいる地域や社会のルールづくりについて声を上げたりして、行政なり企業なりに改善してもらう、ということです。

(2)消費者市民に期待されている行動

この役割をより具体的にしていきますと、おそらく次のような行動が消費者市民に期待されています。

① 持続可能なライフスタイルの実践
…グリーンコンシューマー、ロハス(LOHAS)など
 まずライフスタイルの部分では、グリーンコンシューマー(環境に優しい消費者)があります。イギリスの消費者運動から始まり、「持続可能なライフスタイルをしていきましょう」という活動が広がりました。環境に優しい物を買い、そうでないものを排除する生き方です。
 ロハス(LOHAS:lifestyles of health and sustainability)は、健康で持続可能なライフスタイルという意味です。マーケティングから生まれた言葉で、「お洒落な生き方」としてヤングミセスなどへの商品提案などに使われました。

② 環境・人・社会にやさしい商品の購入
 …環境配慮型商品、社会貢献型商品など
 子どもたちへの事業の基金となる寄付付きのお菓子や、フェアトレード商品を買って開発途上国の人を応援するなど、たくさんの関連商品が販売されています。

③ 寄付や社会的に意味のある投資
 …寄付、社会的責任投資(SRI)など
 社会的責任投資とは、この企業は社会や環境に優しい活動をしているなどと、財務状況以外のところでも企業を評価して投資をすることです。
 物を買うことは商品を通して企業を応援することになりますが、投資も同様で、自分が預けたお金で企業の経営に貢献していけるので、より直接的にその企業を応援することになります。
 寄付は1回きりの支援になりますが、投資や商品の購入では企業活動が活発になり雇用も伸びますので、より広い支援ができます。
 エコファンドやウーマンファンド、ファミリーファンドなど、ファンドも多様化しています。

④ 地域活動への参画
 …見守り活動、消費者啓発活動(担い手)など
 見守り活動などについては、先ほど申し上げたとおりです。

⑤ 相談と意見表明
 …企業のお客様相談、コンプレインレター、行政の消費生活相談、パブリックコメントなど
 企業のお客様相談の窓口に、問題点も良い意見も伝える。
 コンプレインレターを直訳すると「苦情の手紙」になりますが、アメリカでは授業でコンプレインレターの書き方を教えています。訴訟が身近な国でもあり、問題を感じたときに自分がどういう行動をしたらよいかを子どもの頃から学ぶのですね。
 日本でも最近、コンプレインレターが授業に取り入れられるようになってきました。「ネット通販で買ったスニーカーが思っていたものと違うときに、どういった手紙を書いたらいいのか」といったものです。
 企業だけでなく、行政の相談窓口に対しても、意見があったら泣き寝入りしたり遠慮したりせずに伝えましょう。1人だと難しいと考えられるかもしれませんが、消費者みんなが気づいたことを伝えることで、少しでも社会を改善していこう、ということです。

⑥ 情報の適切な管理と活用
 …個人情報保護、情報リテラシー、SNS活用力など
 情報のやりとりは、他と交流をしたり、かかわったりするなかで出てきます。同じコミュニティで生活したり、社会的な活動を行ったりすることにおいては情報の管理がとても重要です。実際に問題も起こっています。

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