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活躍する消費生活アドバイザー

ところで、米田さんが消費生活アドバイザー資格を取得しようと思われたきっかけは?

米田 お客様相談室に入った電話内容を分析していたときのことです。ある製品の年間受付件数が約5,000件ありましたが、そのうち品質に関するものは10%ぐらい、残りの90%は取扱方法や購入場所、付属品の有無についての問合せなどでした(図3参照)。

図3

 これは、おかしい、と。

 つまり、販売時に本来伝えるべきことが伝えきれていなかったんですね。発売前に製品やマニュアルなどを消費者視点で企画できる人がいたり、評価する仕組みがあれば、状況は変わっていたはずです。

 そこで、各分野で有名ブランドを展開している他社さんの活動を見聞きしてみますと、「消費生活アドバイザー」という資格をツールとして20年以上も前から取り組みまれているではないですか。「遅れた!」と思いました。

 ここは、まずは私自身が変わり、会社全体の消費者マインドを変えていく火種になろうと思いました。

今後、デンソーブランドの製品が増えていくと、お客様と直接向き合うことも多くなりますね。

米田 お客様相談室をより強化しなければならないわけです。

 消費者としての視点を日々の業務に取り入れてPDCAを回していく仕組みが必要です。デザインレビューのときや販促物の制作に消費生活アドバイザーを入れて、より消費者目線に立ったものをつくっていきたいと考えています。

お客様相談のフィードバックは、どのようにして行っていますか。

米田 お客様相談の内容を分析した結果、改善しなければならないと判断した事項は「CS改善要求書」にまとめ、製品担当部署に対してバーンとメール文書を飛ばします。「希望書」ではなく、「要求書」です。やってもらうのです。

 お客様からの電話が何件もくる。おかしい。直すべきだろう。そう思ったものは、どんどん発信します。この要求書は、全社品質管理の担当部署にもCCで送ります。

 そうした情報を世界規模でデータベースに蓄積しはじめているんですよ。砂漠ではこの商品は使えないとか、チベットの高原ではダメだとか、いろいろ集まってきています。

 すぐに改善するという気風は、当社に脈々と流れていますね。品質が最優先。でも、アフターマーケット製品では値段も大事ですから、何をどこまで入れ込むか。しっかりとした消費者マインドに基づいて判断し、進めなければなりません。そこに消費生活アドバイザーを活用する仕組みをつくりたいと思っています。

米田さん自身は、どのように試験対策を進められたのでしょうか。

米田 通信教育講座が基本でした。1ページ目からコツコツ順番に読み進め、終わったのが9月くらい。そこからノートに書いて覚えました。書かないと覚えられないタイプなんです。

米田さんが消費生活アドバイザー資格試験の勉強用に作成したノート

 1次、2次試験前にもそれぞれ産能大の直前講座を東京・大阪で受講しました。苦労したのは、やはり勉強時間の創出です。

 この勉強を開始する前は、よく深夜まで映画を観ていましたが、「やるぞ!」と決めてからは、テレビのスイッチを入れることはほとんどなくなりました。静まり返った場所では逆に集中できない性格なので、深夜によくスターバックスに出かけました。スターバックスは、夜になると勉強している人が多く、逆に刺激になりますよ。

 勉強時間は一日平均1時間でしょうか。帰宅後の学習でしたので、気がつくとテキストの上でバタッと寝ていることも少なからずありました。

消費生活アドバイザー資格が仕事で役立つことはありますか。

米田 試験勉強で法律や経済も含めて幅広く学習したことが、新製品の投入からお客様対応まで役立っています。

 たとえば、新製品を見るときに「子供が指を入れないか」「説明が理解できるか」「大げさな表現はないか」などとチェックするようになりました。製品販売前の議論にも、以前より自信をもって参加できるようになった気がします。

消費生活アドバイザーの方々やこれから資格取得を目指す方々へのメッセージを。

米田 この資格は、お客様相談の担当者が取得するものという「流れ」が、前面に出過ぎていると思います。そうではなく、一社会人、一消費者としての基本知識を身につけるものと考えるとよいのではないでしょうか。

 「これを取得したら何ができるようになるのか」と、消費生活アドバイザー資格を「免許」のように思われている方も多いですが、これも誤解です。消費生活における感知力を上げることができる資格だと私は思っています。

 消費生活アドバイザーの資格取得にチャレンジしようとしている人の背中を押せるよう、共感の得られる活用事例の収集や、社会とのつながりをしっかり説明できるようになりたいですね。20年後に、「消費生活アドバイザーを熱心に進めていた人がいたな」と言われるようになるのかもしれません。(取材:2013年7月12日)

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