TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > 活躍する消費生活アドバイザー > 樋渡さん インタビュー記事2

活躍する消費生活アドバイザー

お申し出品(お客様からのクレーム品)の検査対応もされているんですね。

樋渡 はい。福岡の商品試験室が畜肉工場の2階にありますので、特に畜肉のお申し出は多く承ります。
 扱っている畜肉には牛肉、豚肉、鶏肉、ひき肉があります。そのまま食べるものではなく、ご家庭での調理が必要な食品であることから、「異物が混入していた」というお申し出の「異物」が肉の特性(血管や筋など)を指していたり、肉とは関連がないようなものであったりすることも多いです。
 お申し出品の検査依頼を受けると、いつもドキッとします。たとえば、次のような例がありました。

【事例】牛豚合挽ひき肉を調理したところ白い塊が出てきた。何か。
 お預かりしたお申し出品は硬く、一見、壁材のようにも見えました。
 工場で何か不具合があったか確認をしましたが、問題ないとのことで、ひとまず安心して調査に入りました。
 白い塊を顕微鏡観察の前に押しつぶしたところ、強い力で部分的に欠けが生じ、同時に甘いにおいがわずかに感じられました。
 赤外分光計(IR)にて分析した結果、シュクロース(砂糖)のスペクトルパターンを示しました。


 拡大観察と分析結果から、お申し出異物は「砂糖が固まったもの」と判断し、関係者に報告しました。状況から、使いかけの砂糖の中に乾燥状態が長く保たれた砂糖の塊が紛れていたものと思われます。おそらく、ご家庭でひき肉を調理中、使用した砂糖の中に塊があり、パッと見られた時に白い物質の存在に驚かれ、店舗へお申し出いただいたと考えられます。
 工場で砂糖の使用がないことを丁寧に説明した内容にて、お客様に報告いたしました。

【事例】豚ひき肉を調理中、茶色の粒が複数出てきた。何か。
 調理中に発見されたとのことで、このまま食べてよいものかとご不安なご様子でした。
 豚の軟骨かと思いながら顕微鏡観察をしたところ、植物細胞が見えました。データベースと比較したところ、大豆と考えられました。
 さらに、赤外分光計(IR)にて分析した結果、大豆のスペクトルパターン(たんぱく質および脂肪酸を含む大豆のスペクトルパターン)と酷似しており、異物は大豆と判断いたしました。


 とはいえ、お客様に「これは大豆です」とお伝えするだけでは、ご納得いただけません。「この大豆はどこからきたのだろう」と思い、においや硬さ、調理状況から見当をつけたところ、調味料(豆板醤)ではないかと推察。比較検証し、工場では「調味料の使用がない」との内容にて報告いたしました。

 このように、お申し出にはお客様の誤解などもあり、対応が難しく感じる案件があります。
 このような時、どこまでお客様の目線に立って考えることができるか、お客様への説明をどのようにしていただくか(お客様への説明はお客様相談室を通して購入店舗から行います)、毎回、悩みます。お客様相談室と連携、相談しながら進めています。

▲TOP