なかには、どうにも対応策が見つからない相談もあるのではないでしょうか。
堂端 そうですね。「お力になれず、すみません」と言わざるをえないときもありました。
そのとき、「コノヤロウ!」と言って帰る人や、受付用紙を破り捨てる人もいました。
一番こたえるのは、ちょっと笑いながら「ああ、そうですか。仕方ないですね」と力なく帰られる方です。状況が厳しいだけにその後を考えると、心臓に悪かったです。
もちろん、やりがいはとてもあります。ほんとうに多くの方の生活再生を支援してきたと思います。
最近の相談の傾向は、どのようになっていますか。
堂端 貸付数と1件当たりの金額が少なくなっています。
以前は100万円を超える貸付が結構ありましたが、2012年度の平均は58.7万円です。
金額が減ったのには、世帯の所得が減ってきていることもありますが、相談員の家計指導スキルが上がったことも理由かと思います。
以前であれば貸付で対応していた相談を、貸付しなくてもよいような指導が少しずつできるようになったということです。
スキルアップのために、相談員同士の情報共有を活発に行っていますし、勉強会・研修も弁護士、社会福祉士、金融のエキスパートなどを講師に呼び、頻繁に行っています。
年齢的には、40、50歳代の方からの相談が一番多いですが、高齢者もじわじわ増えてきています。
精神的に不安定な方からの相談も増えています。
貸付の使途としては、2012年度は生活資金や家賃等に38%、返済15%、学費14%、税金・国保介護保険等10%となっています。
借金の原因というのはさまざまで、事業の失敗や、連帯保証人になったばかりにとか、失業や転職、ご家族の病気だとか。
ギャンブルは、以前から少ないです。
当相談室の相談数のピークは、多重債務問題が大きく取り上げられていたなかで福岡県の協働事業を開始した2008年でした。
マスコミの取材を受けて非常に多くの問合せがありました。
現在、多重債務問題の相談件数は、世間的には落ち着いていますが、こちらでは減少傾向は見られません。
昨年度は2008年とほぼ同数の問合せがありました。
貸付額の減少は、利息収入の減少なので運営資金の減少に繋がっています。福岡県からの委託料も減少しています。
そこで、地方消費者行政活性化基金を活用した自治体の事業などにも積極的に参加し、事業経営の健全化を図っています。
宮崎県が実施した、消費生活相談員等の研修事業を受託して一人で企画・運営を行ったこともあります。
これには、消費生活アドバイザーの資格が活きました。
私は(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)九州支部の運営委員だったので、そのネットワークが役に立ちました。
相談業務の仕事のほかに、こうした事業の運営もしなくてはならないので、残業が続いて休日がなくなり、軌道に乗るまではほんとうに大変でした。
堂端さんは1998年に消費生活アドバイザー資格を取得されていますね。どんなきっかけだったのでしょうか。
堂端 昔の生協は、組合員活動と事業経営がやや一体的に運用されていて、いい意味で供給者と利用者の帰属意識の線引きがはっきりしていませんでした。
当時、私は配達業務を担当していましたが、どんどん組織が大きくなっていったので、商品の供給側と受け手はいずれきちんと分かれると考えていました。
そうなったとき、両者をつなぐ視点と能力をもった人材が必要になると思い、自分でいろいろ調べて消費生活アドバイザーの資格を見つけ、受験することにしました。
産業能率大学の通信講座を受講して勉強を開始したのですが、実は、合格までに4年もかかっています。
1年目、まったく何も勉強せずに受験したら、やはり撃沈しました。
2年目はきちんと勉強して1次試験は通ったものの、2次試験で落ちました。
3年目は、2次試験のみでしたが、また落ちました。2次試験は、テーマを予測して模範解答をたくさん準備していたのですが、その予想が毎年、外れるのです。
4年目は、さすがにもうやめようと思ったのですが、「せっかくだからあと1回」と受けたら合格になりました。
難しかったのは、日頃まったく考えない『生活知識』科目の「衣」分野ですね。布の編物組織などは、覚える端から忘れていきました(笑)。
(取材:2013年11月29日)
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