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資格活用への取組み

■新規参入分野でのCS推進

 通信販売を行っているヘルスケア製品(化粧品・サプリメント)は、お客様からのアクセス(注文や問合せ)がとくに多い分野である。ヘルスケア業界への新規参入ということで、従来とはまったく違う考え方が必要だったのではないだろうか。

 「KPIで応対を『見える化』していくということも、その一つでした。また、ヘルスケア製品の事業部門(ライフサイエンス事業部)の責任者に対しこちらから働きかけて、CS部門や品質保証・薬事部門の部長・マネージャーに消費生活アドバイザー資格を取得してもらいました。消費者対応の実務に必要な消費者問題や法律の知識を身に付けるためには、消費生活アドバイザー資格の取得は大変有効であると考えています」(木村マネージャー)

 またCS推進室では、各事業部の新製品情報はもらさず入手しており、お客様から問合せが来る可能性がある要件についての情報を共有し、準備する体制も構築されている。

 「コールセンターの現場のメンバーとコミュニケーションを図るなかでいろいろな動きが見えてきました。化粧品のお客様応対では、最初はとまどうことがありましたが、1年ぐらいして応対方法のポイントがわかってきました」と木村マネージャー。

 たとえば、サプリメントでは、効果に関する問合せもよくある。サプリメントは医薬品ではないので、効果への言及はしていないとはいえ、ライフサイエンス事業部の担当者とともに当初は説明対応に苦労したという。

■CS活動による改善例、写真救済プロジェクトも

 CS推進室発の改善例にはどのようなものがあるのだろうか。

 「直近の事例では、あるコンシューマー向け製品の販売がまもなく終了するのですが、CCCではお客様から『その製品の販売を継続してほしい』という要望が増加していました。この状況をCS推進室が関連部署に報告し、対策をとる動きが進んでいます」(木村マネージャー)

 デジタルカメラに簡易取扱説明書を同梱する、インクジェットペーパーのパッケージ表記をわかりやすいものに変更する、インスタントカメラの取扱説明書の文字を大きくするといった改善例もある。

 社会貢献活動に結び付くケースもある。たとえば、2011年の東日本大震災の際に富士フイルムが行った写真救済プロジェクト。震災発生から約10日後の3月20日頃、CCCに「津波により海水や泥水をかぶった写真があるが、何とか救う方法はないか」という問合せが入った。

 CS推進室の川瀬智明さんは語る。

 「我々にも泥水や海水で汚れた写真を洗浄するノウハウはなかったのです。写真が津波に流されることなどは想定していませんでした。そこで、営業技術部門や工場の品質保証部門では、自発的に再現実験を開始したり、過去の知見を結集して、洗浄ノウハウをまとめ、日々当社のホームページに情報を更新していきました。その後、プロジェクト参加メンバーが交代で被災地を訪問し、汚れた写真の洗浄方法を各地のボランティアの方々へお伝えしました。また、「汚れた写真がたくさんあるので洗浄を手伝ってほしい」という被災地からの声も多数いただいたため、神奈川工場(足柄サイト)に写真洗浄作業の場所と設備を確保し、社内のイントラネットでボランティアを呼び掛けました」

 土日には、本社や工場、グループ会社から社員やその家族が駆け付け、また平日にはOBもやってきて写真を洗浄したという。このボランティア活動は2011年6月下旬から約1か月続き、1500人以上のメンバーが参加し、約17万枚の写真を洗浄して被災地にお返ししている。

■消費生活アドバイザーの資格取得支援制度も充実

 現在、富士フイルムの消費生活アドバイザーは45名。その所属先は、研究開発部門や工場の生産部門、営業部門、宣伝・環境などのスタッフ部門までと幅広い。2000年度に通商産業大臣(現経済産業大臣)より消費者志向優良企業として表彰されたことをきっかけに資格取得者が増加したという。

 なかでも、研究開発部門の消費生活アドバイザーは10名を数え、割合が高い。「ちょうど資格取得支援制度が刷新された時期であったこともあり、社内の関心が高かったですね。社内のあちこちにポスターが貼ってありました。研究開発部門の社員はお客様までの距離が遠いので、そこを補うために取得したという方もいらっしゃいました」(川瀬さん)

 富士フイルムでは、消費生活アドバイザーの資格取得についての支援制度も充実している。通信講座の受講料は、講座を修了すれば半額、合格すれば全額の援助が受けられる。『過去問題集』『ハンドブック消費者』『くらしの豆知識』は必須図書ということで受験者に無償配布、受験料および合格後の称号付与申請手数料も会社負担である。さらに、CS推進室の資格保有者による試験対策講座や、時事問題の情報発信(1回/月)も行っている。人材育成を重要視する富士フイルムの姿勢がうかがわれる。(取材:2013年6月20日)

< 終 >


木村彰宏さん

木村彰宏さん
(消費生活アドバイザー 28期)
CSR推進部 CS推進室 マネージャー

「CCCに異動後に資格取得。この資格がお客様の応対業務にダイレクトに使えるので、取得してよかったです」

川瀬智明さん

川瀬智明さん
(消費生活アドバイザー 31期)
CSR推進部 CS推進室

「やはり、CCCに異動して資格取得。現在は、受験者のための情報発信を担当しています」

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