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活躍する消費生活アドバイザー

科学的根拠を示す、というのは?

かとう たとえば、うま味の数値を出してくれる会社や水産試験場からデータをもらいます。海流の流れが厳しいからタコの足が大きくて長くても味が締まっている。タコの餌であるズワイガニやアワビ、日高昆布が一級品だから、美味しい。タウリン、ナイアシンなどうま味を構成する要素がもともとミズダコには多く含まれている、といった科学的根拠を示すのです。
 美味しいものには、根拠があります。
 ウニといえば積丹(しゃこたん)や礼文(れぶん)などの日本海側が有名ですが、とんがりロードの日高、太平洋側は一味違う濃いウニが春先に食べられる、希少なエリアです。その理由としては、日高山脈という北海道で唯一の山脈からの伏流水をはじめとした水が重要です。
 さらにサラブレッドを育てる広い牧場があることも水のきれいさの理由の一つなんです。サラブレッドは何億円にもなりますから大事に育てられ、牧草に農薬を一切かけません。だから川の水がきれい。その水が流れ込む海がきれい。それが蒸発するから雨もきれい。この地域全体の空気がきれいになる。野菜も美味しくなります。きれいな海に育つ日高昆布はミネラル分も多く、うま味成分も多い。その昆布を食べて育つウニは、当然美味しいのです。

 私は地域を徹底的に回って人に会い、話を聞いて、自分も食べて、納得したものしか宣伝しません。これは消費生活アドバイザー資格試験の勉強を通して学んだものの一つです。
 表示もそうです。デザインだけではなく、賞味期限や消費期限も含め表示をきっちり行う。そうした商品づくりを、地元の人といっしょに徹底的にやっているから自信をもって売りにいけます。

軌道にのったところにもアドバイスをしているのですか。

かとう 行政との仕事では、続けているうちに担当者が変わります。そういう意味では最近は、若い行政マンを仕事を通して育てているような感じもします。最初は学校出たてで、「私なんて…」と言っていた人が、いつの間にか率先して汗をかいて仕事をするようになります。

なかとんべつ青年交流事業というのは?

かとう 中頓別は稚内(わっかない)近くの人口約1,700人の町です。私は、この町の観光振興計画を作ったり、台湾の大学生のインターンシッププログラムのサポートもしているのですけれど、この青年交流事業が人づくりという意味からもメインですね。今年4年目になります。
 1年目に町長から言われたのは、「魅力的な若者を育ててほしい」。25〜30歳くらいの若者たちは男子がほとんど。田舎へ行けばいくほど、男子しかいません。
 町の本音としては婚活なのですが、私は婚活のプロではありませんので、まず、「かっこいい、たくましい男」になる講座を企画しました。
 自己紹介の仕方やメールの送り方、美容師の専門家を連れていって「君の髪の色もうちょっと茶色いほうがいいよ」とか、カラーリストを連れていって「君に似合うポロシャツは、この色」とか。外見と内面の指導をバランスよく組み入れた講座を2か月に1回、2年間行いました。

 毎回15人程度が参加します。酪農家が多く、搾乳が終わってからくるので、スタート時間が夜8時。それから1時間半講座をやって、終わると毎回飲み会です。飲んで、「先生ありがとうございました」と言って、帰っていくのです。母ちゃんが息子たちと飲むような感じですね。

 プログラムは私のオリジナルです。
 3年目に入り、私の北海道大学大学院生という部分をフル活用して、中頓別町に留学生を8人連れていきました。若者たちに与えた課題は「留学生があなたたちの町に来て、どういうふうに過ごしたら満足させられるか。この町のよいところをつなげて、1泊2日のツアーコーディネートをしなさい」。
 留学生をアテンドするなかで、女性に対して失礼のない態度が学べます。さらにもう一つ、町の紹介を通して、自分の町への誇りを彼らに植え付けることができます。
 さらに去年はついに、1泊2日のお見合いパーティプログラムを実施してもらいました。素敵な女性10人がやってきまして、なんと当日、7組のカップルができたのです。これは婚活のプロの人たちからも驚かれ、伝説になっています。
 町の基幹産業である酪農は、パートナーがいないと後継者と認められず続けられません。責任重大です。

町づくり・地域活性化を行う時のポイントは、どのようなことでしょうか。

かとう 私の場合は、次の3つです。
 地域を知る。課題を明確にして、目標を決める。一緒に汗をかく人たちをつくる。

 そこで、まず町史を読み、キーマンに会いにいきます。キーマンは役場の人に推薦してもらいます。漁業協同組合長や森林組合の事務局長、文化団体の代表などなど、名士と呼ばれる人には全部会います。
 その後、子育て中の女性や移住者といった人たちに会い、「輝いている人を教えて」「10年後の町はどうなっていたらいい?」と聞いて回ります。
 みんな意見をもっていますよ。
 たとえば、「本当は町から出ていきたくなかったのに、仕事がないから出て行った同級生が多い」。これには、「起業に助成金を出すとよい」「もっと若い人が働けるような部門を企業に作ればよい」と、計画します。それから、関係しそうな人たちに「どうですか、無理ですか?」と尋ねる。「やりたいけれど、お金がない」と言われたら、北海道庁に行き、「補助金ありませんか?あらたな事業をつくりませんか?」と縦横無尽に動いていきます。

行政と地域の間にも立たれるわけですね。

かとう そうです。私は、自分はコーディネーターだと思っています。両方を知らないといけないのです。

 行政の人には、初対面でもどんどん会いにいきます。これまでの経歴や紹介があったりするので、わりと誰でも会ってくれますね。経済産業省の消費者相談室に勤務していた時には、「国家公務員は電話でノーと言ってはいけない」といった雰囲気がありました。行政の担当部署がわからなくても、電話してみたほうがよいと思います。

 私は、最初に火をつけて、地域の人たちに本気で取り組んでもらうけれど、「気がついたら、かとうさんちょっと遠くにいたね」というふうに、徐々に訪ねる頻度を減らしていくという手法です。でも、ゼロにはしません。母として姉として、関わった以上は責任をもちます。
 そのため、地域活性化はボランティアでは続かないので、法人化してもうかる、稼げる仕組みを最初から考えています。

もうかる仕組みづくりは難しそうです。

かとう 最初の頃は、私も失敗していました。作りたいものを作ったものの、売り先を決めていなかったんです。
 でも今は、たとえば「最初からローソンで売るのか、銀座松屋で売るのか」を決めて、そこのバイヤーに相談に行きます。「私たちの地域には、この素材があって、こんな商品があるのだけれど、松屋さんで売ってもらうにはどうしたらいいですか」と、町の人と私が銀座に行って話を聞いて、そこから商品を作る。
 ゴールを決め、そこから行程を戻っていく、というのが地域活性化の失敗を少なくするポイントだと思います。

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