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活躍する消費生活アドバイザー

アイリスオーヤマの品質管理の特徴は、どういったことでしょうか。

大西 3つのステップで商品の品質を決めています。
 第一に、LED照明、家電などもあり商品の幅が広いので、JIS規格や(一財)製品安全協会のSG規格、そして、業界基準を調べます。
 次に、消費者庁、経済産業省などで公表されている類似商品を含む事故事例やリコール情報を分析して、新しく立ち上げる商品の品質基準に取り入れます。
 最後に、関連する部門の者が参加し、「ここはこういうふうにしたほうがいい」「この基準はこうである」「表示はこうすべきだよ」と消費者目線に立ち、かんかんがくがく議論するデザイン・レビュー(設計審査評価)を行います。

製品事故の対応をされたこともありますか。

大西 はい。2006年にペーパーシュレッダーで重大製品事故を起こし、初めてリコールを行いました。この事故では、被害者のご家族や弁護士との示談交渉から経済産業省との折衝、そしてマスコミ対応からリコール対応まで、すべてにかかわりました。
 この時の反省が、アイリスオーヤマの基本的な安全品質、モノづくりに脈々とつながっています。
 事故の後、私は明治大学の向殿政男先生の社会人講座に参加して、製品安全の考え方とリスクマネジメントの手法、企業における安全文化構築の必要性について学びました。
 この講座で得た「予見可能な誤使用は誤使用と考えず、安全方策を取るべき」との考え方、そして、「モノづくりにおいて安全文化を醸成すべき」との教えが品質管理の基本になりました。

 その後、事故を起こさないモノづくりのための品質管理システムの構築と、さまざまなマニュアル作成に取り組みました。加えて、品質安全の基礎を築くとともに、製品事故や重大な品質クレームに対してリスク評価を行い、品質改善を含めた対応方針を決める製品リスク委員会のコアメンバーとして活動しました。

 定年後、品質管理部門のマネージャーは外れましたが、培った経験を活かし、68歳で退職するまで消費者庁、経済産業省、(独)製品評価技術基盤機構(NITE)などの行政対応や消費者対応についてのアドバイスに務めました。

消費者の声を活かした品質改善にも取り組まれたのですね。

大西 はい。いろいろあるのですが、身近なところでは加湿器付空気清浄器の品質改善があります。
 加湿は加熱式のため吹出口から90℃を超える高温の蒸気が出ます。取扱説明書と本体には「高温注意・やけど注意」の表示をしていましたが、お客様から「熱すぎる」「やけどする」との声が寄せられたため、本体の注意表示を大きく分かりやすくする改善をしました。

 印象深いものに、使い捨てカイロと湯たんぽがあります。東日本大震災で電力が逼迫した2011年の冬、爆発的に販売数が増え、高齢者や若い女性に低温やけどが多発しました。低温やけどは皮膚の深部までダメージを与え重篤になるため、使用シーンを想定し、使用時に気づきやすいように、湯たんぽはキャップに、使い捨てカイロは利用時にはがすシール面に低温やけどの注意表示を入れました。

「見える収納」に使うクリア収納ケースも、お客様の声から?

大西 いえ、これは社長(現会長)の発案だったんですよ。早朝、釣りに出かけようとした社長が、寒いのでセーターを探されたのですが、当時の収納ケースは色つきで中が見えない。セーターが見つかるまでいくつものケースを開けつづけ、探すのに苦労されたときに「ケースを透明にしたらいいんじゃないか!」とひらめいたそうです。
 当初は取引先から「透明にすると中が見えるから、嫌がって売れないよ」と言われたり、透明用の原料もないため原料メーカーと共同で開発するなど、難しい面もありました。
 しかし、生産し売りはじめたら、「中が見えて便利だ」と爆発的に売れ、増産に次ぐ増産となり、会社の成長を牽引しました。

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