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活躍する消費生活アドバイザー

倉井 美穂さん

ITとユーザーの橋渡しをするライターが求められています

倉井 美穂さん(消費生活アドバイザー19期)
UX / テクニカルライター、IT講師

1990年にソニー(株)に入社、VAIOや放送局向け音響製品の取扱説明書のライティングと制作に携わる。2002年に同社を退職しライターとして独立、デジタル製品のレビュー、イベント記事などの取材・執筆を行う。(株)ハッピーコムにて「UX /テクニカルライター育成講座」の講師を務めるほか、IT研修の講師、オンライン講座のチューター、製品モニターとしても活動。
Apple Teacherの資格ももつ。趣味は読書。コロナ禍以前はビブリオバトルへの参戦も。

テクニカルライターとは、どういったお仕事なのでしょうか。

倉井 ひとことでいうと、「専門用語などの技術的な言葉を一般の方にもわかりやすく、平易な言葉で説明する職種」という定義になると思います。急速に技術が進むAIやITなどの分野で、とりわけ需要が高まっています。
 企業に所属して製品の取扱説明書を作っている方や理解が難しい製品についての解説コラムを書いている方、開発者にインタビューして原稿をまとめている方もいます。
 製品の開発者は難しい技術用語を使うことが多く、そのままでは専門知識のない一般の人には、意味が伝わりにくい。そこで、テクニカルライターがわかりやすく、内容をかみ砕いて伝える橋渡し役をするわけです。

「UX /テクニカルライター育成講座」の講師もされているとのこと。UXは、User eXperienceですね。

倉井 はい。UXは数年前からよく使われるようになってきた言葉です。
 いろいろなサービスをスマホやPCで使うとき、画面を見ただけではユーザーがうまく使えないことがよくあります。
 たとえば映画などの動画配信サービスに「面白いらしいから加入しよう」と登録画面を見たとします。「会員登録はこちら」とか「アカウントの作成」などと書いてあると、わからなくもないけれどちょっと構えてしまいますよね。最近はそうではなくて、「今すぐ始めよう」とか「○週間無料でお試し」などと、親しみやすいデザインでボタンに書いてあったりします。このほうがハードルが低くて「ちょっと登録してみようかな」という気持ちになります。

 そうしたユーザーの体験や経験(User eXperience)をベースにユーザーの気持ちに寄り添った技法が「UXライティング」です。
 もともとテクニカルライターのような方たちは、ずっと「技術用語をどう言い換えたら、一般の方にわかりやすくなるのかな」と考えながら仕事をしていたので、「UXライター」になりうる可能性をもっていると思います。

UXライターとテクニカルライターで、大きく異なるところは?

倉井 PCやスマホは画面を見ながら操作しますよね。画面に表示できる文字数は限られているので、短い文章でフレンドリーなコピーを考えなくてはなりません。UXライターは、そうした条件も考えながら原稿をまとめます。

 画面に技術用語が出てくると、「クリックしたら、どうなるんだろう。怖い」「何を言っているかわからない」と思うユーザーは少なくありません。
 ところが、IT業界や技術分野の方は専門用語に慣れているので、わからない人の気持ちがわからないことが多いです。
 たとえば、企業が新製品や新サービスを世に出すときに「ローンチする」と言います。英語のlaunchなんですけれど、一般的にはわかりづらいですよね。
 業界や技術の方は当たり前に使うのだけれど、「使う側の人から見たら、どうなんだろう」と、わかりやすい言葉で表現する。UXライターは、ユーザー視点をもちつつ行う仕事だと思います。
 今後は、UXライターのような立場の方の意見が、製品開発などにも取り入れられていくようになるのかもしれません。

 言葉の使い方やユーザー視点の表現というところでは、テクニカルライターとUXライターはつながっていると思っています。

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