長く仕事をされているなかで、強く印象に残っている言葉などはありますか?
高山 いくつもありますが、二つ紹介しますね。
一つは、「あなたの経験は、ほかの誰も経験していないものだから、自信をもっていい」という言葉です。15歳も上の大学の先輩からの言葉で、これにはとても勇気づけられました。「この経験をしているのは私しかいない」と思うことで、自信がもてました。経験そのものが、自分の強みになる。「そう信じて進めばよい」といったことかと思います。
もう一つは、「『あなたともう一度仕事がしたい』と思われるような仕事をしましょう」という言葉です。これは日本ヒーブ協議会でお世話になった、シャープ初の女性執行役員になられた岡田圭子さんに言っていただいたものです。職場に大卒女性や女性管理職がほとんどいなかった時代に、企業の違いを超えて育てていただいたと思っています。
大学講師としての活動について、簡単にご紹介願います。
高山 二つの科目を担当しています。
一つは「消費者問題論」で、去年9月に始め、半期1コマです。もう一つは「消費者行動論」、今年4月から通年で1コマ行っています。
講師活動のきっかけは、2002年、修士を修了した年に、社会人大学院の特任助教授となった同期が、「ゲストティーチャーとして研究内容について話してもらいたい」と声をかけてくれたことです。ほかにも、大学の同窓の先輩から、「企業の人が話すといいと思うので」と、2007〜2008年に大妻女子大の非常勤講師をさせていただきました。それが現在の講師の仕事につながっています。
企業で活躍されてきた高山さんならではの講義ですね。
高山 消費者問題というと、悪者の企業から消費者を守る、という対立のイメージが強い気がしています。ところが企業で仕事をしていますと、そんなことはなくて、企業は消費者を知りたくてたまらないんですよ。対立ではなく、対話を求めているのです。
そこで私が担当している「消費者問題論」では、全15回の講座のうち事業者側の話を3回ほど入れています。アクティブラーニングで、学生が実際に企業の消費者窓口に自分で電話をしたり、Webで調べたりします。学生が企業にコンタクトするのは勇気がいるかもしれませんが、その垣根をアクティブラーニングという講義スタイルで取り払います。企業側が「消費者を知りたい」と考えていることを学生に知ってもらうと、卒業後に、それぞれの職場などに広がっていく。これは、私が会社で基盤を整えて、横に広げているのと同じなんですよね。
人が変わると、積み上がっていくものがありません。しかし仕組みをしっかりつくっておけば、人が変わっても、積み重ねていくことができます。
また、学生でも取得できる資格として、消費生活アドバイザーの紹介も行っています。未来の消費生活アドバイザーが増えるといいですね。
資格取得に関心をもっている方へのメッセージをお願いします。
高山 現在は、消費者に向けた活動はスタンダードになっていて、社会に浸透してきています。そうしたなか、専門的な知識がアップデートできる、仲間ができる、そしてさらに自分を高めていけることの価値が増していると思います。
消費生活アドバイザー資格者であるからこそ、更新講座やメルマガを通して、さらなる学習ができ、自己研鑽となります。社会の動きを常に追いながら、自分の取組みを社会にも役立てていける仕組みとして、消費生活アドバイザーを位置づけてもらえたらと思います。
(取材:2025年10月6日)
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