■「お客様の声」をすばやく商品に反映
ユニ・チャームでは、お客様からの電話相談に対応する担当者(一次受付)を「アドバイザー」と呼んでいる。お客様に対してアドバイスができるスペシャリストだからだ。「アドバイザー」は全員消費生活アドバイザーの有資格者である。
お客様相談センターは社長直轄部署であり、かつ、どこの事業部にも属さず、独立している。
原マネージャーによれば、その理由は2つ。
「一つは迅速に『お客様の声』を経営ボードに伝えるため。もう一つは的確に『お客様の声』を各部門に伝えるためです」。
独立した部署であることにより、各部門のバイアスがかかりにくくなっている。
さらに、担当役員が人事とものづくり部門を所管しているため、「お客様の声」が製品に反映されやすい組織になっている。
「製品に反映するスピードは、非常に速いと思います」と、山田弘志センター長。
「『お客様の声』がどのようにものづくりに反映されたか、毎月、お客様相談センターに報告される仕組みになっています。高原豪久(たかひさ)社長から、『お客様の声』を少しでも商品に活かせるよう、みんなで知恵を出すようにと指示されています」。
取材の1週間前に、高原社長とお客様相談センターのメンバーおよび常務担当役員との懇親会が行われたそうである。高原社長のスケジュールには、年1回、この懇親会が組み入れられているとのこと。
「お客様の声」の内容は、まず日報としてまとめられ、製造部門関係者や役員がいつでも見られるようになっている。
次に週報として受付件数やトピックス等がまとめられ、関係部門に発信され、情報が共有されている。
さらに月報として各事業部ごとに内容がまとめられ、開発本部やグローバルマーケティング本部を含めた報告会が実施されている。
この報告会にはアドバイザーも参加し、「お客様の声」に基づく提案を行っている。
「アドバイザーは、言わばお客様の代弁者。社内には『アドバイザーが言うなら…』と耳を傾ける雰囲気があります。
それだけに、会社のバイアスをかけないで、感じたことを伝えてほしいとアドバイザーに話しています」。(原マネージャー)
また、新商品の発売やキャンペーンの実施前にはグローバルマーケティング本部の担当者などによる勉強会が実施される。用意された想定Q&Aでは足りず、アドバイザー側から追加でQ出しをすることが多いそうである。
同様に新商品の発売やパッケージのリニューアルの際には、必ず事前にCSR本部等の担当者とともにアドバイザーが「パッケージの表示がわかりやすい表示になっているか」「誤認・誤使用につながる表示になっていないか」などを確認している。
お客様視点に立って、「ちょっとわかりにくい表現ですね。こうしたほうがいいんじゃないでしょうか」と提案をするのである。ここでOKが出ないと、新商品は世に出ない仕組みになっている。
原マネージャーは、「昔で言えば、関所のような役割をしているところ」と言う。
商品への反映例を2つ紹介しよう。
「『お客様の声』が具体的な商品に反映されたときには、特にやりがいを感じます」と、アドバイザーの宇佐美良子さん。
◎ベビーケアでの商品反映提案
近年、低体重児の出産が増加していることから、新生児紙オムツのラインナップにS、新生児、新生児用小さめを追加。
◎ヘルスケアでの商品反映提案
前立腺のトラブルで困っているお客様より「男性用の使い捨てパッドがほしい」という声が多数寄せられていたことから、開発を提案。