TOP > 消費生活アドバイザー > 資格活用事例 > WEBマガジン「あどばいざあ」 > 特集記事 > 講演抄録 欧州先進企業事例から学ぶ持続可能な消費と生産4

特集記事

企業事例

●マークス&スペンサー

130年の歴史をもつ老舗のスーパーマーケットで、英国で中心的な役割を果たしている企業(売上高:約1.6兆円)です。
 この企業はCSRについても進んだ活動をしていました。ところが調査してみると、約8万6,000人いる従業員中で100人しか、CSRを理解して推進していなかった。そこで2007年、「プランA」という名称をつけて浸透させ、ビジネスとして全社員が取組みをすることができるものとしたのです。

私はマイク・バリー部長に何回もインタビューをし、実際にストアにも行って、状況も確認しています。
 それぞれの従業員が、プランAのすべてを知っているわけではないのですが、プランAのなかで自分が何を担当しているのかが明確に仕事として割り振られています。

2014年には新たに「プランA 2020」が出され、消費者に向けた活動として「インスピレーション:鼓舞」が入りました。「持続可能なライフスタイルとは何か」を企業側が消費者に伝えることが重要とコミットメントしています。

プランAの実施にあたってはNGOとの協働も行っています。
 日本とは違い、海外ではNGOの信頼度が高いです。
 エデルマンという調査会社が、エデルマン・トラスト・バロメータという調査で、世界各国で、政府、メディア、NGO、企業に対する信頼度を調査したところ、世界で一番信頼度が高かったのがNGOで、企業⇒政府⇒メディアの順番となりました。日本の場合には、企業⇒政府⇒メディア⇒NGOという順になります。欧州ではNGOが一番信頼度が高いので、企業がNGOと協働することによって信頼度を高めることができ、そこに協働する理由があります。
 マークス&スペンサーは、国際環境NGOのWWFやオックスファム(90カ国以上で、貧困を生み出す状況を変えるため活動する国際協力団体)、ユニセフといった団体と協働しています。

その好事例の一つとして「ショワッピング(SHOWOPPING)」を紹介しましょう。名称はスワッピング(SWAPPNG)とショッピング(SHOPPING)を掛け合わせた造語で、オックスファムとの協働事業です。
 欧州では、古着の最終処分は埋め立て処理が主流なのですが、その削減が社会的課題となっていました。
 マークス&スペンサーが古着を回収し、オックスファムで再販売、発展途上国への送付、マテリアルリサイクルなどを行っています。この古着販売の利益は、人道援助や世界の貧困撲滅のために使われます。
 また「ショワップ・コート」という古着販売ができなかった服を繊維に戻しマテリアルリサイクルして、再び製品にし販売しています。バージン材を使用していないので価格も半分となり、ファッション性でも優れたものとしています。

こうした製品は、後述の「サーキュラー・エコノミー」という経済の仕組みにも貢献します。
 ショワッピングは、社会課題を解決する「サステナブル・ストーリーテリング」になっており、消費者に対して消費者が行動を起こすことができるようにストーリーを打ち出しています。

●テスコ(Tesco)

英国最大手のスーパーマーケットであるテスコは、2014年、食品廃棄を減らす活動を始めました。
 それ以前は「カーボンフットプリント」という、各製品の二酸化炭素排出量を算出し、排出量を減らしていく活動に取り組んでいました。しかし、企業は二酸化炭素排出量の削減は、企業/工場単位の排出量を削減する方法が主流で、製品ごとのカーボンフットプリントの算出は、あまり大きな流れにはならず、表示しても、他社が比較対象となるように類似の製品のカーボンフットプリントの算出をすることがなく、二酸化炭素の排出量削減にあまり貢献できるような状態ではありませんでした。

そこでテスコは、社会問題として重要度の高い食品廃棄にフォーカスした取組みを始めたのです。
 2016年1月には、テスコのCEOが議長として、グローバルに食品廃棄を減らすキャンペーン「チャンピオンズ12.3」をユニリーバ、ネスレ、各国政府大臣、関連団体の代表ら30名で立ち上げ、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12.3を2030年までに達成することを目的として活動しています。

食品廃棄物を半減させる活動に企業として取り組んでいくことを積極的に消費者に知らせ、課題を達成することができるような取組みをしています。

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